年金受給者のふるさと納税で、先に知っておきたい結論は3つです。
- 住民税(所得割)がかかっている人だけ控除を受けられます。年金収入が少なく住民税が非課税の人は、寄付しても戻りません
- 確定申告をしないならワンストップ特例が使えます。医療費控除などで確定申告をする年は、申告書に寄附金控除も書きます
- 会社員向けの早見表は使えません。年金は公的年金等控除が大きく、同じ収入でも上限が別物になります
この3つを押さえれば、手続きは会社員とほとんど同じです。以下、状況別に整理します。
状況別の早見表
まずは自分がどこに当てはまるかを確認してください。
| あなたの状況 | 寄付する意味 | 手続き |
|---|---|---|
| 年金収入が少なく、住民税が非課税 | なし(全額自己負担) | 寄付しても控除されない |
| 年金のみ・確定申告をしない(申告不要制度の範囲内) | あり | ワンストップ特例が使える(5自治体以内) |
| 年金のみだが、医療費控除などで確定申告をする | あり | 確定申告に寄附金控除を記載(ワンストップは無効) |
| 年金+パート・給与があり、年金以外の所得が20万円超 | あり | 確定申告が必要なので、申告で寄附金控除 |
| 公的年金等の収入が400万円超 | あり | 確定申告が必要なので、申告で寄附金控除 |
| 6自治体以上に寄付した | あり | ワンストップは使えず、確定申告 |
「寄付する意味」の判断は、所得税ではなく住民税の所得割がかかっているかどうかが軸です。ふるさと納税の控除の大部分は住民税から差し引かれるからです。毎年6月ごろに届く住民税の決定通知書で、所得割の金額を確認できます。
年金は「雑所得」。上限が会社員より低くなりやすい理由
公的年金(国民年金・厚生年金など)は、税金の上では雑所得に分類されます。年金の収入から公的年金等控除を差し引いた残りが所得になります。
公的年金等控除は65歳を境に大きく変わる
国税庁の速算表(年金以外の所得が1,000万円以下の場合)では、控除の最低額は次のとおりです。
- 65歳未満:年金収入が130万円未満なら、控除は60万円
- 65歳以上:年金収入が330万円未満なら、控除は110万円
たとえば65歳以上で年金収入が200万円なら、110万円が差し引かれて所得は90万円です。ここからさらに基礎控除や社会保険料控除などが引かれ、残りに住民税がかかります。収入に対して課税される部分がかなり小さくなるので、住民税の所得割も小さく、ふるさと納税の上限も小さくなります。
上限の考え方は「住民税所得割額の約2割+2,000円」
総務省の説明では、住民税から差し引かれる特例分は住民税所得割額の2割を超えない範囲とされています。2割を超えると、所得税と住民税の控除を合計しても全額は戻らず、自己負担が2,000円を超えます。
ざっくりした目安は「住民税所得割額の約2割+2,000円」です。年金受給者は所得割が小さくなりやすいので、この目安で出る金額も会社員の感覚より小さくなりがちです。決定通知書の所得割額がわかれば、おおよその見当がつきます。
ネットの早見表をそのまま使うと危ない
よく見かける「年収◯◯万円なら上限◯円」という表は、総務省自身が給与所得者の場合の目安と注記しているものです。給与の収入と年金の収入では差し引かれる控除の種類も額も違います。年金の額を「年収」の欄に当てはめると、上限を高く見積もって自己負担が出るおそれがあります。
年金受給者は、限度額シミュレーションで所得と控除額を入れて確認するか、お住まいの市区町村の住民税担当に問い合わせるのが確実です。上限の基本的な考え方はなぜ2,000円で済むのかにまとめています。
住民税が非課税の人は寄付しても戻らない
ふるさと納税は納めている税金から差し引く仕組みです。住民税の所得割がゼロの人は、差し引く元がありません。寄付した金額はそのまま自己負担になり、返礼品を寄付額で買うのと同じ結果になります。
非課税の目安は自治体で違う
住民税が非課税になる収入の線は、住んでいる自治体や家族構成で変わります。例えば神戸市のFAQ(2026年1月更新)では、単身で年金収入のみの場合、65歳以上は155万円以下、65歳未満は105万円以下で住民税が非課税と案内されています(年齢はその年の12月31日時点)。扶養親族が1人いる65歳以上なら211万円以下です。
これはあくまで神戸市の例です。同じ年金額でも自治体によって線は少しずつ違うので、ご自身の判定は決定通知書か市区町村の窓口で確認してください。非課税の線をわずかに超えている人も所得割は小さいので、上限はごく少額になります。
非課税なのに寄付してしまったら
控除はされませんが、寄付そのものが無効になるわけではありません。返礼品は届きます。翌年以降は、決定通知書で所得割が出ているかを見てから寄付額を決めると安心です。そもそも寄付しないほうがよいケースはふるさと納税をしない方がいい人でも整理しています。
ワンストップ特例と確定申告、どちらになるか
確定申告不要制度の範囲内ならワンストップが使える
国税庁によると、公的年金等の収入が400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です(公的年金等に係る確定申告不要制度)。
ワンストップ特例の対象は「確定申告の不要な給与所得者等」で、寄付先が5自治体以内の人です(総務省)。名前に「給与所得者」とありますが、流山市は確定申告をする必要のない公的年金等受給者も対象になると明記しています。つまり、年金だけで申告不要の人は、会社員と同じようにワンストップ特例で手続きできます。申請書の出し方はワンストップ特例のやり方を参照してください。
医療費控除で確定申告するならワンストップは無効
申告不要制度の範囲内でも、医療費控除や社会保険料控除などで所得税の還付を受けるための確定申告はできます(国税庁)。年金受給者は医療費がかさみやすいので、この形で申告する人は少なくありません。
注意したいのは、確定申告をした時点でワンストップ特例の申請は無効になることです。流山市は、医療費控除などで確定申告する場合はふるさと納税の寄附金控除も含めるよう案内しています。申告書に寄附金控除を書き忘れると、ふるさと納税の控除が受けられません。
また流山市は、市民税・県民税の申告をした場合もワンストップ特例は無効になるとしています。年金受給者は所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があります(国税庁)。住民税の申告をする予定があるなら、寄附金控除の扱いをお住まいの市区町村に確認してください。
書き忘れに気づいたときの対処は確定申告を忘れた・間違えたとき、ワンストップと申告が重なったときの考え方はワンストップ特例が使えない人にまとめています。
年金+パート・給与がある人
パートや再雇用の給与がある場合、給与収入から給与所得控除を引いた給与所得が「年金以外の所得」に入ります。これが20万円を超えると申告不要制度の対象外になり、確定申告が必要です。その場合ワンストップ特例は使えないので、申告書に寄附金控除を記載します。
給与と年金の両方がある人は所得が合算されるので、年金だけの人より上限は上がります。ただし早見表は給与だけの前提なので、やはり使えません。
年金天引きの住民税でも控除は反映される
65歳以上で住民税がかかっている人は、多くの場合、住民税が年金から天引き(特別徴収)されています。天引きだから控除が効かない、ということはありません。
ふるさと納税の住民税分の控除は、寄付した翌年度の住民税の税額を計算するときに差し引かれます。年金天引きされる額は、その税額をもとに決まります。
船橋市の説明では、天引きは次の流れです。
- 4月・6月・8月(仮徴収):前年度の税額の6分の1ずつ
- 10月・12月・2月(本徴収):その年度の税額から仮徴収分を引いた残りを3等分
仮徴収は前年度の税額が基準なので、仕組み上、ふるさと納税で減った分は10月以降の天引き額に表れます。「4月の天引きが減っていない」と心配する必要はありません。なお、天引きの対象は公的年金の所得にかかる住民税だけで、給与など年金以外の所得の分は別の方法で納めます(船橋市)。控除が反映されているかは、翌年度の住民税の決定通知書で確認するか、市区町村に問い合わせてください。
医療費控除・社会保険料控除が多いと上限は下がる
上限は住民税所得割額で決まるので、所得控除が増えるほど上限は下がります。年金受給者に多いのは次の2つです。
- 社会保険料控除:年金から天引きされる介護保険料や後期高齢者医療保険料、国民健康保険料など
- 医療費控除:入院や通院で医療費が多かった年
特に医療費控除は、前年と同じ感覚で寄付すると上限を超えやすいポイントです。医療費控除で所得割が減ると、ふるさと納税の枠も小さくなります。手術や入院があった年は、寄付額を控えめにしておくと安全です。
現実的な進め方としては、前年の決定通知書の所得割額を基準に、その2割より少なめに寄付しておき、医療費の多い年はさらに抑える、という順番がおすすめです。金額が決まったら寄付額から選ぶ一覧で探せます。日持ちする定番ならお米の返礼品も選びやすい品目です。
よくある質問
年金生活者でもふるさと納税はできますか
できます。寄付そのものは誰でもできますが、控除を受けられるのは住民税の所得割がかかっている人です。非課税の人は寄付しても戻らないので、まず決定通知書で所得割があるかを確認してください。
年金受給者はワンストップ特例を使えますか
確定申告をしない人なら使えます。公的年金等の収入が400万円以下で年金以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要なので、寄付先が5自治体以内ならワンストップ特例の対象です。医療費控除などで確定申告をする年は使えません。
医療費控除の確定申告とワンストップ特例を両方使えますか
使えません。確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効になります。確定申告書に医療費控除と寄附金控除の両方を書けば、ふるさと納税の控除も受けられます。つまずきやすい点は確定申告でつまずく所も参考にしてください。
住民税が年金から天引きされていても控除されますか
されます。控除は翌年度の住民税額の計算で差し引かれ、天引き額はその税額をもとに決まります。4〜8月の仮徴収は前年度の税額が基準なので、減額は10月以降の天引きに表れる仕組みです。
65歳になる前と後で上限は変わりますか
変わる可能性があります。公的年金等控除の最低額が65歳未満は60万円、65歳以上は110万円と違うため、同じ年金額でも65歳以上のほうが所得が小さくなり、上限も下がりやすくなります。年齢はその年の12月31日時点で判定されます。
遺族年金だけの場合はどうなりますか
国民年金法や厚生年金保険法に基づく遺族年金には、原則として所得税がかかりません(国税庁)。遺族年金のほかに課税される収入がなければ、差し引く元の税金がないので寄付しても戻らない可能性が高くなります。ほかに課税される収入がある場合は、その分の住民税所得割を基準に考えます。住民税の扱いを含め、税務署・お住まいの市区町村に確認してください。
まとめ
年金受給者のふるさと納税は、住民税の所得割があるかを確認するところから始まります。所得割があれば、確定申告をしない年はワンストップ特例、医療費控除などで申告する年は申告書に寄附金控除を書く。上限は公的年金等控除で所得が小さくなる分だけ低めなので、会社員向けの早見表は使わず、所得割額の約2割を目安に控えめに寄付するのが失敗しないコツです。
寄付の流れそのものはやり方5ステップ、ワンストップの申請を出し忘れたときはワンストップを忘れたときを参照してください。
出典
- 総務省|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について(住民税特例分は所得割額の2割が上限)
- 総務省|ふるさと納税のしくみ|ふるさと納税の流れ(ワンストップ特例は確定申告の不要な給与所得者等・5団体以内)
- 総務省|MIC 2015年4月号(全額控除されるふるさと納税枠の目安)(あくまで給与所得者の場合の目安との注記)
- 国税庁|No.1600 公的年金等の課税関係(雑所得の計算・確定申告不要制度・住民税申告が必要な場合)
- 国税庁|高齢者と税(年金と税)(公的年金等控除額)
- 国税庁|No.1605 遺族の方に支給される公的年金等
- 流山市|ふるさと納税ワンストップ特例は確定申告や市民税・県民税申告をすると無効になります
- 神戸市FAQ|いくらまでの収入なら住民税(市県民税)が課税されませんか?
- 船橋市|公的年金からの市・県民税の特別徴収(天引き)について
※2026年10月時点の情報です。上限額や住民税が非課税となる基準は、所得・控除・家族構成・お住まいの自治体で変わります。個別の判断は所轄の税務署・お住まいの市区町村にご確認ください。